熱帯夜

熱帯夜。
熱に絆されてふらふらと彷徨っているうちに
知らない街まで来てしまった。そこかしこが階段になっている街だ。

暑さのせいか、人影は無く、階段に腰を下ろして足をさする老人がひとり。
「ここはどこですか」
老人に声をかけると、少し驚いたような顔をしながら老人は応える。

「来訪者とは珍しい。ここは、階段の街だよ。
 夢に飲み込まれた者が集まる街さ。
 君もそのクチか。」

「どうなんでしょう。あまりにも暑くて、ふらふらしているうちにたどり着いてしまった。」

「今夜は暑いね。でも気をつけなさい。
 夢中に悩みながら、階段を行きつ戻りつしているうちにわからなくなってしまうよ。
 俺はもうずいぶん昔からこの街で階段を上り下りしてきたが、
 もうどちらが登りでどちらが下りかすら分からなくなってしまった。」

「何の為に上り下りしていたのか、もう思い出せない。仕方がないから、一休みしたらまた上り下りを繰り返すの さ。」

どこか遠い目でそうつぶやくと、老人は立ち上がり、また階段を上り始めた。
なんだか僕は怖くなり、そっとその場を離れると、この街で一番高そうな階段に登り、腰掛けた。

あの老人が、上りも下りも分からなくなるほど階段を夢中で登ったように、
夢中になれるものって僕にはあるだろうか。

大きな満月を見上げながら、そんなことをふと考えた。

FxCam_1344697663902.jpg

そんなお話を頭の中に思い浮かべながら描きました。

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  • 2012/11/01 14:05
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まとめ【熱帯夜】
熱帯夜。熱に絆されてふらふらと彷徨っているうちに知らない街まで来てしまった。そこかしこが階段になっ
  • 2012/10/26 20:59
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熱帯夜。熱に絆されてふらふらと彷徨っているうちに知らない街まで来てしまった。そこかしこが階段になっ
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